”ウォッカ×新疆パン×オサカ”
今回は、 イルケシュタム峠国境越え の最終章であるキルギス入国後からキルギス第2の都市であるオシュまでの道のりを記します。
早朝中国カシュガルを出発し、夕方4時ごろ漸くキルギス ( Kyrgyzstan )の国境に到達した私は、何度もサポートしてくれた心強い中国人の旦那と別れた。
そして家族が待つオシュに帰る予定の言葉も通じない国境警備隊2名と共にイルケシュタム峠を出発した。
イルケシュタム峠からキルギス第2の都市オシュまでの過程を記します。
√ イルケシュタム峠からオシュまでのルート
★キルギスの南の首都:Osh を目指すルート。
途中Sary-tash(サリタシュ)とGulcha(グルチャ)を通過する、計4時間の道のり。
√ イルケシュタム峠国境越え キルギス編
16:30 頃 Irkeshtam イミグレ出発!!
国境警備隊の2人は、『ヤップン』を連呼して私に話しかけてきた。
どうやらキルギス語で日本は、ヤップンというらしい。
運転手の40代前後の男性は、名を『オサカ』と言う。愛車を『ヤップンマシーン(日本車)』とテンション高めで自慢してくる可愛いおじさんである。
若干小腹が空いている私に、ピザワンホール並の巨大新疆パンをちぎって振舞ってくれた。
車内は和やかな雰囲気で順調な滑り出しである。
出発してしばらくして、車窓が真っ白になった。フロントミラーをみると、運転しているオサカの顔が険しくなっている。どうやらだいぶ吹雪が強くなったようだ。
車の揺れが尋常ではない。ランクルじゃないと耐えられない様な険しい道を進んでいく。
イルケシュタム出発前、中国人の旦那が夜に雪山越えは危険だから近くの村で泊まる方が良いのでは?と言っていたのを思い出したが、漸くその意味が分かった気がした。
走り出して1時間ほどしたら、もうそこは一面氷と雪の銀色の世界だった。
17:30 巨大貨物トラックのスリップ事故に遭遇!!
オサカが深刻な顔をして後ろを振り返って私に車の中で待ってろとジェスチャーで伝えてきた。そして2人の国境警備隊は外の白銀の世界に消えていった。
目視で前方を確認すると、巨大トラックがスリップして道を塞ぎ、何台もの貨物トラックが狭い山道に列をなしていた。後ろを振り返っても車がエンストしていたりで進めなくなっていた。
つまり、私はキルギスの冬山に閉じ込められたのであった。
私は、パンをつまみながらお腹を満たしてゆっくりしていたが、外で子供がかわいそうな顔で凍えているのを見て、外がただ事ではない事態なのは明らかであった。
私も思い切って外へ出てみたが、やはり普通の寒さではなかった。ブリザードが吹き荒れており、カメラもバッテリーが冷えて電源がつかなくなった。
オサカら国境警備隊は、前方の大型トラックをなんとか退かしたようで、私と車に戻り、エンジンをつけて出発しようとしたが、全く動かない。
18:00 まさかのタイヤが雪にはまる
オサカともう一人の国境警備隊は、私を外へ連れ出し車を一緒に押してくれと頼むジェスチャーをしていた。私は雪山で夜を越したくはなかったので、当然手伝った。しばらく車を押していると、寒さで凍え死にそうになった笑。
私の日本製の手袋と防寒具は冬山仕様にはなっていなかった。
すごい必死だったのを覚えている。ブリザードが吹き荒れ、氷点下-20度?標高3000mで生きるために必死になっていた。
必死に車を押していると、オサカがウォッカをショットで何杯も飲み始めた。
お前も飲めと言わんばかりにショットにたんまりウォッカを注いで私に手渡した。飲まな死ぬと言わんばかりの形相だったのでとにかく飲みまくって体を温め、押し続けた。
車の中に戻って、パンをかじりウォッカを飲んで、外へ出て車を押すの繰り返し。
3人で懸命に押した甲斐もあり、漸くタイヤが前に進み、さあ出発だとエンジンをかけようとしたが、かからない。
未明 悲報:冬山でついにエンジンが潰れる
完全に詰んだという表情のオサカ。
愛車のヤップン号が潰れ、且つ冬山で缶詰になり, 表情が完全に曇っていた。
私も朝からの国境越え・雪山での車押しで, 体力的にきつかった. 加えて, 私たちは車の中でウォッカを飲んで体を強引に温めるのも限界が来ていた.
未明 吉報:ランクルが後ろより現れる
急にランクルが後ろから現れ, オサカが私のバックパックを担いで『ヤップンカモン!!』とランクルに飛び込んだ.
私も後部座席に飛び込んで, 命の危機を回避した. 救世主である30前後のお兄さんは家に帰宅途中で、途中のSary-Tashなどの街まで人を送っている最中だった。
ランクルで雪山を強引に突破していく. 車内に流れるキルギス音楽はこの危機的状況にぴったりの選曲であった. キルギス音楽は何かクセになる曲調だった.
車内で、バッテリーが復活したカメラでランクル内の様子を録画していた.
Oshまでの雪山越えの車内を撮影したもの.BGMにキルギスの音楽が流れており、聞くたびにキルギスを思い出し, 懐かしさを感じる.
雪山を夜通し走行し、道の両サイドを雪の壁が迫る中、運転手の雪山ドライブテクで雪道をかき分け、近郊の町で人を下ろしながら, 下山していった.
PM10:00前後 オサカ家到着
どこかよくわからない場所で下車した. 救世主のランクル兄さんが金をくれというので、あるだけの人民元:200元を手渡したら喜んで去って行った.
どうやら下車した場所はオサカの家の前であった。オサカが疲労困憊の私を泊めてくれるというので, 家にお邪魔した. 右も左も分からない土地で深夜にホテルを探すことは先ず不可能で、正に九死に一生を得たとはこのことである.
キルギスで初の宿泊は, どこか分からないオサカの家であった.
結局ここで素敵な家族に出会うこととなる。
それではまた来週!!再见!!!
▼イルケシュタム国境越えの記事は下記です!
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