“香港人の本音”
今回は、香港中文大学がアンケートを通して集めた『有關「逃犯條例修訂草案」意見調查 調查結果』の統計を、「 香港デモ意識調査 」として日本語訳してシェアします。
毎週港中関係の授業を受講しており、毎週起こるデモの進捗状況とその背景について議論をしています。その中でシェア可能で且つ興味深い資料が出てきたので共有します。
現在デモ進捗情報を毎日更新しているわけですが、偶に過激なデモ活動について香港人はどう思っているのか友人から質問を受けます。
この調査結果は、定期的に香港人アイデンティティ等の調査を行う香港中文大学が今月10月に発表した貴重なデータです。少しでも皆さんの疑問解決に繋がり、香港と香港人、香港デモについて興味を持って頂ければ幸いです。
*あくまで調査結果を共有するのが目的で、下記私の所感も結果から考察しているに過ぎず、私自身が賛成か反対かは議論の対象では無い事をご了承ください。
目次【本記事の内容】
✔️ 香港デモ意識調査 情報
・調査期間:2019 年 10 月 8 – 14 日 (7日間)。
・調査対象:15歲以上,広東語が操れる香港市民。
・調査方法:固定電話と携帯電話の二つ。それぞれ機関にストックされている番号にかけて上記調査対象に該当すれば伺う。
・対象者数:516 (固定電話) + 235 (携帯電話) = 751 名のデータ。
・男女比:男性(372名)女性(379名)
・年齢比:10代(6.4%) 20代(12.1%) 30代(19.2%) 40代(20.1%) 50代(21.4%) 60代(13.0%) 70代以上(7.5%) 回答なし(0.4%)
✔️ 香港デモ意識調査 結果
・下記データソースはこちらをクリック(中文)。
・表に関しては、私の先生からシェアさせて頂いております。
・全21の質問項目から特に関心が高いであろう8つを抜粋して紹介。
詳しい数字を見たい方は、上記リンクよりご覧ください。
Q1:香港警察は信頼できる?

10月現在、警察が全く信用できないと回答した方が51.5%
大規模デモが始まった6月初旬と比較して2倍以上に膨らんでおります。
7月21日元朗駅での白服集団襲撃事件の際に、警察が見て見ぬ振りをしていた事が、9月調査の信頼度急落から読み取れるかと存じます。
香港人15歳以上の約半数が警察への信頼度ゼロを主張しているのも、現状況を見ていれば納得できるが、むしろ最近のデモの盛り上がり方からもっと多くても不思議ではないと思います。

Q2:警察組織の大規模改革は成されるべきだと思うか?

デモ隊が唱えている五大要求(現在は警察組織の解体も加わり六大要求説も浮上)の一つである「警察に独立調査委員会の設置」への香港市民の意見も分かる本調査内容。
<アンケート結果>
YES:68.8%NO:22.0%(9.2%が回答拒否或いはノーコメント)
<個人的所感>
約6割以上の人々が賛成しており、上記警察への信頼度調査結果と照らし合わせても納得の結果かと思います。
事実各メディアで放映されている警察と鉢合わせた市民からの反応から、常軌を逸するほどの恐怖を感じるので、今後市民と警察の溝は数世紀単位で埋まらないのではと危惧します。
Q3:覆面禁止法に対する緊急法案

記憶に新しい覆面禁止法と緊急法発令への香港人の本音を調査した結果です。
<アンケート結果>
(Q1) 覆面禁止法条例に対する緊急法施行を支持する?
反対:71.4%
どちらとも言えない:8.2%
賛成:19.3%
(Q2) 覆面禁止法は香港デモを沈静化するのに機能する?
逆効果:62.3%
どちらとも言えない:21.2%
賛成:15.1%
(Q3) 緊急法が再度別の法案施行の為に使われるのを支持する?
支持しない:76.6%
支持する:17.7%
<個人的所感>
約7割の香港人が覆面禁止法並びに緊急法に対して批判的な意見を持っていることは明らかです。9月に逃亡犯条例撤回後、特に市民の声に敏感になっているキャリーラム行政長官は、当結果を推測するのは容易だとは思いますが、再度緊急法で夜間外出禁止令を出すような事も厭わない覚悟もお持ちでしょう。
特に夜に授業がある私は、夜間外出禁止令により、香港で引きこもり化する最悪ケースが想像できます。。。笑
<補足知識>
・当アンケートの背景
林鄭月娥(キャリー・ラム)行政長官は10月4日、緊急時に行政長官が公共の利益のために必要な規制を制定できる「緊急状況規則条例(緊急条例)」を適用し、デモ参加者がマスクなどで顔全体を覆うことを禁止する「覆面禁止法」を5日に発令。(ロイター参照)
・緊急条例とは?
緊急または公共の危険に直面した際に、議会を通すことなく規制を行う権限を、理事会の最高経営責任者(行政長官)に付与する香港の法律(wikipedia参照)97年返還以降初。
・覆面禁止法とは?
適用されるのは「非合法な集会」や「政府の許可を経ていない集会」など。ここで「身分の識別を妨げるため顔を覆うものを着用」した場合対象となる。罰則は、最高2万5000香港ドルの罰金とおよび1年以内の禁固刑。(HUFFPOST参照)
Q4:デモ隊&警察の暴力行為に対する印象調査

7月21日元朗での事件以後から特に、太子等各地で警察やデモ隊の行動が、SNSで拡散され物議を醸しています。この結果は、市民目線から見た暴力に対する調査結果です。
(Q1) デモ隊と警察。それぞれで、度を超えた暴力だ!と答えた人の割合。
デモ隊:42%(微増)
警察:67%(微減)
(Q2) 政府が平和的デモへの返答に失敗した際、急進的な行動(デモ隊)は理解できる。
理解できる:59.2%(△3.5%)
どちらとも言えない:13.1%(▼2.1%)
理解できない:27.5%(△0.6%)
<個人的所感>
1つ目の問題では、10月以降に顕在化したMTR破壊やスターバックスや吉野家の破壊行為から、デモ隊の暴力的行為の印象が9月時点と比較し微増していると考えられます。
2つ目の問題では、香港デモ活動における急進的な活動に関して、デモ隊の行動がエスカレートしている事も、警察の取り締まり強化や銃発射事件も相まって賛成反対双方上昇していると考える。
私自身最寄駅が完全に潰れて、四六時中家にいたので正直MTRを壊すのだけはやめてほしい。現在授業に行けなかった分の補講に追われているのもこれが原因。恨みはしないけども益々行動がデモ隊&警察双方エスカレートしているのは肌で感じる。
Q5:香港における自警主義の考え

政治的な問題に関し、異なった考えを持つ人同士(大陸人VS香港人等)の対立において、どのような対処なら賛成できるか?を聞いている質問です。
<アンケート結果>
・デモ隊は対立サイドを制圧するに限り、力を以って自己防御行為をする:52.5%
・デモ隊は暴力行為はすべきでは無い。対立は警察によって対処:25.8%
・デモ隊は相手サイドに力で仕返しをする:18.2%
<個人的所感>
最近頻繁に見かけるデモ隊とその反対派による喧嘩行為。時には、反対側が血まみれに。時にはデモ隊がボコボコに。
自己防衛を目的に相手を制するのは賛成!が半分以上を占めています。先日のタクシードライバーがデモ隊に突入した事件が記憶に新しい。警察への信用が無くなった今、自己防衛の考えが向上したのはアンケート結果からも、デモ隊の装備からも容易に推察できます。
Q6:警察の発砲事件について

警察がデモ参加者の少年に発砲した件について以下項目のどれに賛成か?を伺っています。
<アンケート結果>
警察はデモ隊に発砲すべきでない:48.1%
胸に打ったことが受け入れられない:20.4%
混沌とした状況下で、発砲は疑問の余地ありだが、理解もできる:18.6%
自己防衛として全く問題ない:11.4%
<個人的見解>
全体の60%が警察の発砲は考えられないと回答したものの、30%の方は若干肯定する考えを持つ。自己防衛の定義とは何なのか。圧倒的な武力差だったが、危険を感じた時点で躊躇いもなく発砲しても良いのか。議論を呼ぶ事件です。
また下記アンケート結果にて、警察の独立調査委員会設置を望む声が上昇している主な理由の一つだと考える。各SNSやメディア報道の通り、時が過ぎれば過ぎるほど、警察の不信感が募る事件が増えているのが現状。
Q7:各要求事項の支持具合

デモ隊が一つも欠けてはならないと主張する五大要求。その要求事項の支持具合を伺っています。(五大要求は下記補足知識参照)
<アンケート結果(前月比)>
警察の独立調査委員会設置:YES90%(△10%)NO 約8%(▼10%)
キャリーラム辞任:YES75%(△10%)NO 約18%(▼10%)
普通選挙実施:YES80%(△5%)NO10%(▼5%)
<個人的所感>
Q6の警察の市民への発砲事件に関する回答。覆面禁止法や緊急法で市民の反感をさらに買う香港政府。そのトップに居座るキャリーラム行政長官。上記アンケート結果が、これらの出来事を反映しているのは明らか。
中国返還後度々訴えられてきた真の普通選挙実施の希望度合いも、キャリーラム行政長官の仕事ぶりが拍車をかけて上昇が目立つ。
デモ隊は要求が全て叶うまで戦う予定なので、香港デモが今後も泥沼化するのは必至!
<補足知識>
>五大要求とは?
・逃亡犯条例改正案完全撤回
・警察に独立調査委員会を設置
・デモ活動で逮捕された者の釈放
・暴徒という定義を撤回
・普通選挙の実施(キャリーラム辞任)
Q8:結局警察とデモ隊の衝突の最大の責任者は?

これは、警察とデモ隊が武力を以って衝突している現状を生んだ一番の責任者は誰か?を尋ねている質問。
<アンケート結果>:単位(%)

<個人的所感>
最近一部のデモ隊と警察の衝突が激化し、状況が混沌化しているように感じる。誰も解決方法が分からない。結果として、落とし所が見い出せない状況のまま今週末再度大規模デモが実施される見通し。終わらない、終わる気配すらない。
香港市民目線で、今回の衝突の最大の責任者だと思う勢力は、ダントツで香港政府(52.5%)でした。逃亡犯条例改正案の撤回への遅れた対応が、デモ活動を長引かせる大きな要因になったと感じる方が多いのでは?と考えます。
香港市民目線で、10月中にMTRを破壊したデモ隊の責任度合いではなく、警察の責任が上昇しているのを見ると、多くの方が公共交通機関の不自由さも我慢してデモ隊支援にまわっているのか?とも推察できます。
では、今回はここまで!
ツイッターやブログにて香港デモ最新情報を更新しているので、是非そちらも確認お願いします。
次回も香港デモに関する情報があれば個別記事にして展開していきます。
では、また次回!再見!
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