“チベット仏教を学ぶ”
今回は、“チベット仏教寺院”である大昭寺,色拉寺,哲蚌寺を紹介し、チベット仏教を掘り下げる内容を続っていきます。
1960年代の文化大革命で多くの“チベット仏教寺院”が破壊され、数多くの歴史遺産が失われました。今回私は、破壊されながらも修復を経て現在もチベット仏教徒の熱い信仰の対象となっている3つの寺院を訪れ、チベット仏教を学んできました。
ポタラ宮の様に白を基調とする建物が多く、見れば見るほど美しいチベット仏教寺院。その素晴らしい寺院の写真と共にチベット仏教の世界を綴っていきます。
目次【本記事の内容】
✓大昭寺
1. 寺院の概要
ラサ旧市街にあるチベット仏教寺院。
吐魯蕃時代の遺構も残し、チベット最古の土木建築物でもある。释迦牟尼殿、宗喀巴大师殿、ソンツェン・ガンポ等の仏像を配置している。
寺院の外壁は”八廊”と呼ばれ、その周囲の通りを“八廊街”と呼称する。信者は念仏を唱えながらチベット独自の祈り方でゆっくり八廊街を廻って祈りを捧げる。八廊に直接祈るものも多くいる。
手荷物検査あり。入場料は約85元。開館時間:9時〜18時
2. 寺院の歴史
7世紀にチベットを統一したソンツェン・ガンポに嫁いだ唐人妻:文成公主の意志によって建てられた。よって現在まで1300年以上の歴史を誇る。チベット仏教徒の聖地として、熱い信仰の対象となっている。
私のガイドによると、唐人妻:文成公主が寺院の場所を決める際、指輪を投げて落ちた場所に建てることに決定した。結局指輪は真っ白な湖に落ち、落ちた場所にストゥーパ(チベット寺院にある仏塔)の様な物体が現れた。その神秘性も相まって真っ白な湖を埋め立て、大昭寺を建てた逸話が残っているとのこと。
3. 寺院観光の様子
重々しい手荷物検査のゲートを潜り抜け、八廊街周回ルート手前にでる。
上記概要で説明した八廊に向かって、各々チベット仏教独特の祈祷方法を以って祈りを捧げる。
<見たまんまの祈祷作法>
立ち上がったまま合掌→膝から地に座り土下座→両手を地面に滑らせながら全身を地面につける→再度膝をつけた状態に戻して合掌→立ち上がる。
上記工程を繰り返している様に見える。
中に入ると、美しい屏風画、壁画が描かれている空間がお出迎え。
美しい境内。個人的に、ブッダの黒髪を青色に塗ったり、僧侶の服装である橙色や赤色を基調とした色使いは好きである。
可愛い猫もお出迎え。
撮影禁止空間には、この寺院建設の意志を見せた文成公主やソンツェン・ガンポの仏像等が安置されている。
撮影禁止空間を抜けると、美しい黄金色の建築物が鑑賞できる。本当に美しい。
大昭寺を出て八廊街を歩き始める。
周回は時計回りと決まっており、逆走することは許されない。。。
八廊街はかなり現代化(観光地化)が進んでいる模様。
ここを友人との待ち合わせ場所として使用した。
八廊街の脇には、小規模な寺院があり、信者は立ち寄って念仏を唱えながら上写真の丸太をまわして祈りを捧げる。
多くの方々が、念仏を唱えながら時計回りに歩いて周回する者もいれば、チベット仏教の祈祷作法を以って周回する熱心な方々もいる。
全身を地に伏してまで祈る彼らの信仰心はまさに尊敬に値する。
✓色拉寺
1. 寺院の概要
ラサ北部に位置し、後述する哲蚌寺と同様のラサ三大寺院の内の一つである。
寺院の周囲は自然と小高い山に囲まれている。
この寺の最も特徴的な光景は、修道院で僧侶たちが独特の勉強方法で学習する様子である。
普段修行僧が幼少期からどの様にチベット仏教の世界で鍛錬を積んでいるのか間近で感じられる寺院である。
措钦大殿、麦扎仓、阿巴扎仓等見所も多く、敷地面積は割と広い。
開館時間:9時〜16時、価格:50元。
2. 寺院の歴史
1419年に绛钦却杰兴(ジャムヤン・チュジェ・サキャイェーシェー)が創建。
日本人で初のチベット渡航者:河口慧海が学んだ寺としても知られる。
1950年代のチベット動乱において、多くの僧侶がチベットを脱出。結果として、亡命した僧侶たちの手で南インドに伽藍が再建され、チベットに残った現色拉寺は残った僧侶で寺組織が再建され、共産党政府の元で寺院として活動を再開している。
3. 寺院観光の様子
ラサ市北部へと車を走らせる。
色拉寺に到着!多くの参拝客で寺は賑わっておりました。
美しい青空と白を基調とした建物が連なり、素晴らしい絶景。
ただ、あちこちに監視カメラがあるのが気にかかる。。。
大聖堂入り口。ここから撮影禁止となっております。
中には、曼荼羅や仏像を配置し、中でも马头金剛前には多くの参拝客が列をなしていた。
ガイドによると、色拉寺で見かける子供達は、鼻の上が黒く塗られており、幼子がぐっすり眠れる様に、泣かない様に等のおまじない要素が込められているそう。
ポタラ宮でも見かけた紅色の「ベマ」。寺院のみ使用可能の建築資材である。
チベット仏教徒の勉強風景を垣間見れる勉強道場に到着。
二人一組になって、勉強した経典、ブッダの教えに基づいた問題を立っている僧侶が座っている僧侶に対して出題する。
正解の場合は、手の平でもう片方の手の平を弾き、不正解は手の甲で弾く。そのため、道場には弾く音が鳴り響く。
お互いに刺激しあい、仏教徒としての道を磨き続けている。独特な雰囲気が漂う空間でした。
✓哲蚌寺
1. 寺院の概要
前述した色拉寺と同様、チベット仏教三大寺院の一つ。
周囲は荒野に囲まれた立地で、遠方から鉱石発掘の爆発音が聞こえてくる。
歴代のダライ・ラマはこの寺で修行に励んだそうで、チベット仏教の中でも宗教的価値は非常に高いと言える。
営業時間:9時から14時、価格:50元
2. 寺院の歴史
チベット仏教最高の学僧:ツォンカパの弟子たちによって1416年に建てられた。
ダライ・ラマ3世がモンゴル首長:アルタン・ハーンよりダライ・ラマの称号を授かってから17世紀にダライ・ラマ5世がポタラ宮殿に移るまで歴代ダライ・ラマの拠点であった。
チベット動乱以前には、15,000人もの修行僧が修行に励んでいたが、文革時には多くの伽藍が破壊され、僧侶たちも殺害、拘束、追放されてしまった。
結果、大多数がインドに亡命し、南インドで当該寺院を再建し、活動している。チベットに残った寺院は再建が進んだものの、在籍者は数百人に満たず、巡礼地や観光地としての役割が強い。
3. 寺院観光の様子





チベット仏教寺院の中でも、哲蚌寺は急勾配な坂が多い印象。高山病が残る方にはきついでしょう。
数少ない修行僧も急勾配を登っていきます。
目下には雄大な荒野が広がります。遠くからは鉱石発掘に使用されている爆弾の音が聞こえてきます。
絶えず急勾配が続いていきます。階段を遠目で見ると、まるで万里の長城の様です。
























✓チベット仏教を学んだ感想
チベット仏教は、インドより7世紀ごろから伝来した大乗仏教とチベットの土俗信仰が結びつき形成され続けてきた宗教。
私が高校時代に学んだ曹洞宗も大乗仏教の流れを組む宗派。いわゆる“只管打座”(座禅)を通して身と心に安らぎを与え、内から仏の姿を目指すというもの。
個人的には、私の仏教観は曹洞宗からの影響が強いので、今生きているこの世界で座禅と報恩感謝を意識して行えば救われるといった偏った認識でした。
ただ、チベット仏教は次期ダライ・ラマの決定方法然り、転生を前提としており、現世での行いが来世でも起こる気持ちで一瞬一瞬を大切に生きているということ。
実際、私が知り合った多くのチベット人が念仏を心で毎分毎秒唱えていたり、念仏メーターを指に付けて目視で唱えた回数を確認できる様にしたりと、チベット仏教徒の熱い信仰心が垣間見えました。
私自身熱心な仏教徒ではありませんが、彼らの一瞬一瞬を大切に生きる教義は感銘を受けました。日々の行いが来世に反映される=日々の努力は転生後も生かされるという様に解釈する事で、身が引き締まると思います。
彼らの熱い信仰心を垣間見たが故に、現在のチベット仏教との状況には悲しさを覚えます。彼らが転生後、自由に信ずるままに信仰できる世の中になっている事を願うばかりです。
今回はここまで!
次回は、ラサの食事や豆知識を綴っていこうと思います。
ではまた次回!再見!
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